弁護士や法律事務所と聞くと、多くの相談者候補が今なお「敷居が高い」「近づきがたい」と感じている――。この事実は、ウェブサイトでの集客を考える上で、先生方が決して無視できない重要なポイントです。
「報酬が高そう」「後からとんでもない費用を請求されるのでは」「弁護士は怖い人かもしれない」
こうした漠然とした不安、いわゆる「心理的ハードル」は、たとえウェブサイトに多くのアクセスを集めたとしても、最終的な「問い合わせ」という行動を阻む”見えない壁”として立ちはだかります。
今回は、SEO対策が成功し、アクセス数も順調だったにもかかわらず、なぜか問い合わせが伸び悩んだ法律事務所の実際の改善事例を通じて、この見えない壁を取り払うための具体的な方法をご紹介します。
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改善事例:九州某法律事務所のケース
これは、私たちが過去に制作し、運用をサポートした九州の法律事務所での実例です。当時の状況は、以下のようなものでした。
- SEOは成功: 狙ったキーワードで検索上位表示を達成。
- アクセスは好調: 日々のアクセス数は増加傾向にあり、目標値を上回る日も多数。
- しかし、問い合わせが少ない: アクセス数や検索キーワードから予測される件数と、実際の問い合わせ件数に大きな乖離があった。
技術的な改善やデザインの調整を何度も繰り返しましたが、状況は一向に好転しません。問題は、サイトの見た目や機能ではない、もっと根深い部分にあると私たちは考えました。
課題の核心:相談者の声から見えた「本当の不安」
そこで、先生にご協力をいただき、ホームページ経由で実際に受任に至ったご依頼者様へアンケートを実施。守秘義務に抵触しない範囲で、その声をフィードバックしていただきました。
すると、驚くほど多くの方が、問い合わせの際に共通の不安を抱えていたことが判明したのです。
「『無料法律相談』と書いてあるが、本当に無料なのか信じきれなかった」 「相談したら、後から何かしらの名目で費用を請求されるのではないかと不安だった」
ウェブサイト上で「無料」と謳うだけでは、相談者が長年抱いてきた弁護士への不信感を払拭するには全く不十分だったのです。アクセスはあっても、この最後の不安がブレーキとなり、多くの潜在的な依頼者を逃していたことが明らかになりました。
解決策:「徹底的な安心感」と「透明性」の提示
課題の核心が見えたことで、改善の方向性は明確になりました。私たちが取り組んだのは、小手先のデザイン変更ではなく、相談者の不安に真正面から向き合うコンテンツの追加と強化です。
1. 「完全無料」であることの反復と明言
まず、「法律相談と見積もりは無料」という文言を、単なるバナーや一文だけでなく、サイト内のあらゆる関連ページ(トップページ、サービスページ、問い合わせフォームの上部など)に、表現を変えながら繰り返し記載しました。
「ご契約に至らない限り、費用は一切発生しません」といった、より踏み込んだ表現も加え、相談者の疑念を払拭する工夫を凝らしました。
2. 「無料相談だけで解決した事例」の掲載
これが最も効果的でした。実際に無料相談の範囲内で問題が解決し、ご依頼者様が費用を一切支払うことなく安心された事例を、コンテンツとして複数掲載したのです。
これは、「私たちの無料相談は、その場しのぎの勧誘の場ではなく、それ自体に価値があるものです」という何よりの証明になります。この事例を見た相談者は、「自分もまずは安心して話を聞いてもらえるかもしれない」と感じ、問い合わせへの心理的な抵抗が大きく下がります。
改善の結果:問い合わせ件数の増加と客層の変化
これらの改善策を実施したところ、ウェブサイトからの問い合わせ件数は明らかに増加に転じました。
非常に興味深かったのは、特に男性からの問い合わせが顕著に増えたことです。その明確な理由は今でも分析中ですが、費用に対するリスクや不透明さを、より強く警戒する層の不安を解消できたことが、この結果に繋がったのではないかと推測しています。
このように、弁護士・司法書士のホームページ集客は、単にアクセスを集めるSEO対策だけでは完結しません。サイトを訪れた相談者の「心理的ハードル」をいかに下げ、安心感と信頼感を与えられるか。2025年現在、ユーザーの目がますます厳しくなる中で、この視点はこれまで以上に重要になっていくでしょう。