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弁護士や司法書士の先生方から、ホームページ運用についてこのようなご相談をよくいただきます。
「アクセス数は増えてきたのに、問い合わせが来ない」 「問い合わせはあるけれど、なかなか受任(成約)につながらない」
ホームページは公開して終わりではありません。アクセス解析を行い、ボトルネック(詰まっている箇所)を見つけて改善することで、初めて「集客装置」として機能します。
今回は、集客の流れを「①アクセス → ②問い合わせ」と「②問い合わせ → ③受任」のフェーズに分け、私たちが実際に検証し成果を出した「具体的施策」と「運用の鉄則」を公開します。
このページの目次
第1章:「アクセスはあるのに、問い合わせが来ない」原因と対策
SEO対策や広告がある程度うまくいき、サイトへの訪問者(アクセス)は増えている。しかし、電話もメールも来ない。 この場合に考えられる原因は、主に「アクセスの質(キーワード)」か「サイト内の壁(コンテンツ・UI)」のどちらかです。
- そのキーワード、本当に悩みがある人ですか?
アクセス数が多くても、その中身が「法律用語の意味を知りたいだけの学生」や「同業者の調査」であれば、問い合わせにはつながりません。まずは、「ユーザーの悩み(検索意図)」と「先生が提供している記事」がマッチしているかを見直す必要があります。
【改善策:Q&Aサイトとサジェスト活用で「生の声」を拾う】 専門家視点の難しい言葉ではなく、ユーザーが実際に使う「話し言葉」で記事を書くことが重要です。
Q&Aサイト(Yahoo!知恵袋など): 「相続」「交通事故」などで検索し、ユーザーの切実な悩みや誤解しているポイントをリサーチします。これらに対する「プロの回答」を記事にすることで、本当に悩んでいる層を集客できます。
Googleサジェスト(関連キーワード): 検索窓に入力した際に表示される予測変換は「多くの人が検索している悩み」そのものです。ここに出てくるキーワードを記事タイトルに盛り込みましょう。
- サイト内に「心理的な壁」を作っていませんか?
質の高いアクセスが来ているのに問い合わせがない場合、ユーザーがサイト内で「不安」や「ストレス」を感じて離脱している可能性があります。特に以下の3点は致命的なボトルネックになりがちです。
①写真戦略:「格式」よりも「相談しやすさ」
歴史ある事務所や経験豊富な先生ほど、「格式」や「重厚さ」を重視しがちです。しかし、悩みを持つユーザーにとって、あまりに威厳のある写真は「怒られそう」「高そう」という心理的な壁になります。
改善実録: ある大規模事務所様で、写真を「重厚なもの」から「親しみやすいもの」へ、コピーを「専門用語」から「平易な言葉」へ変更したところ、わずか4日で反応率が改善しました。 「先生としての威厳」よりも「相談者への寄り添い」を表現することが、Web集客の第一歩です。
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②情報の透明性:些細な情報が決定打になる
「要相談」ばかりで料金目安がわからない、どんな場所かわかりにくい、といった状態はユーザーを不安にさせます。 特に「子連れ相談の可否」や「駐車場の有無」など、先生にとっては些細に思える情報が、ユーザーにとっては問い合わせの決定打になることが多々あります。これらを明記するだけで反応率は変わります。
③表示速度:写真は多ければ良いわけではない
「事務所の雰囲気を伝えたい」と高画質の写真を大量に掲載すると、ページの表示速度が低下します。Googleはユーザーの利便性を重視するため、表示が遅いサイトの評価(検索順位)を下げます。 写真は「必要な場所に、必要な枚数」だけ配置し、軽量化してサクサク表示させることを優先しましょう。
第2章:【EFO】問い合わせフォームの「引き算」がカギ
「問い合わせフォーム」は、ユーザーと事務所をつなぐ最後の架け橋です。ここでの脱落(カゴ落ち)を防ぐためには、「手間の削除」と「心理的ハードルの除去」が必要です。
- 入力項目の「断捨離」が成約への近道
「せっかく問い合わせをもらうなら、詳細な情報が欲しい」と考えて、フォームの入力項目を増やしていませんか? ある地方都市の法律事務所様でのA/Bテストの結果、以下の事実が判明しました。
検証内容:「項目数維持・必須減」「項目減・必須維持」「項目も必須も減」の3パターンを比較。
結果:「項目数も入力必須も減らしたパターン」が圧勝。
詳細な聴取は面談時で十分です。まずは「接点を持つこと」を最優先にし、項目を極限まで削ぎ落としましょう。
- 「希望の回答方法」でハードルを下げる
なぜユーザーは電話ではなくフォームを使うのでしょうか? 「営業時間外だから」という理由だけでなく、以下のような事情を抱えているケースが多々あります。
「いきなり弁護士と話すのが怖い」
「電話がつながらなかったら嫌だ」
「耳が聞こえにくい(聴覚障害など)」
「他の事務所にも同時に問い合わせている」
そこで有効なのが、「希望の回答方法(メール/電話)」という項目を設けることです。 実務上は、メール希望であっても詳細確認のために電話が必要なケースが多いですが、入り口で「メールでもいいんだ」という選択肢を見せるだけで、ユーザーの心理的ハードルは劇的に下がります。これは私たちが士業業界でいち早く導入し、成果を上げ続けている手法です。
第3章:【分析と改善】「見られていない」を可視化する
「良いコンテンツを書いたのに読まれない」「ボタンを押してもらえない」 そんな時は、勘に頼らず「データ」を見て改善する必要があります。
ヒートマップ(マウス・スクロール分析)の活用
アクセス解析では、以下のような情報を視覚化(ヒートマップ化)して分析します。
スクロール到達率: ページのどこまで読まれて離脱したか。
マウスの動き・クリック箇所: どこに注目し、どこをクリックしようとしたか。
【改善実録】 ある事務所様では、重要な「料金表」や「問い合わせボタン」がページ下部にあり、そこまでスクロールされていないことが判明しました。また、当初は「価格」を売りにしていたものの、競争激化により「価格以外の強み」へ訴求ポイントを変える必要が出てきました。 このように、訴求ポイントやユーザーの関心は変化します。定期的に「どこが見られているか」を確認し、よく見られている場所(ファーストビューなど)に重要なボタンやメッセージを移動させる改善が不可欠です。
第4章:「問い合わせはあるのに、受任につながらない」場合の運用
最後に、問い合わせ後の「受任率」を上げるためのポイントです。ここでは「ユーザーの緊急度」と「事務所の対応力」が鍵を握ります。
- ユーザーの「本気度」を見極める
例えば離婚案件でも、「絶対に離婚したい(緊急度:高)」人と、「離婚したほうがいいのかな?(緊急度:低)」という人では対応が異なります。 もし緊急度が低い層からの問い合わせばかりで受任率が悪いなら、ホームページの訴求内容を「お悩み相談」寄りから、「有利に進めるための具体的戦略」寄りへチューニングする必要があります。 - 「営業時間」の盲点
実は、受任率を上げるための意外な盲点が「営業時間の設定」です。当社のデータ分析によると、ターゲット層によって「受任しやすい時間帯」には明確な傾向があります。
弁護士(法律事務所): 午前中の電話問い合わせは受任率が高い傾向。
司法書士: 昼〜15時頃の問い合わせが受任につながりやすい傾向。
オフィス街の事務所: 会社員のランチタイムや17時以降が多い。
「問い合わせはあるけど決まらない」という場合、実は「一番ホットな客層からの電話を取り逃がしている(営業時間外になっている)」可能性があります。転送電話の活用や、時間の微調整を検討してみてください。
まとめ:ユーザー目線での「引き算」と「データ活用」
今回の事例に共通するのは、「事務所側の『こうありたい』を押し付けると失敗する」ということです。
- 詳細を知りたいからフォームを長くする
- 威厳を見せたいから重厚な写真にする
- どこまで読まれているか確認せずにコンテンツを配置する
これらはすべて事務所側の都合です。 「アクセスはあるのに受任できない」と悩んだときは、一度ご自身のサイトを「悩みを抱えたユーザー」の気持ちで見てみてください。
「入力の手間を減らす」「話しやすそうに見せる」「データを見て配置を変える」 このユーザー目線の改善こそが、問い合わせを最大化し、安定した受任を生み出すための最短ルートなのです。
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