弁護士の開業マーケティング戦略|集客方法と営業規制を解説

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なぜ開業弁護士にマーケティング戦略が不可欠なのか

「無事に独立開業したものの、どうやって依頼者を見つければいいのだろう…」「看板を出しておけば、そのうち相談が来るだろうか…」
開業されたばかりの弁護士の先生方の中には、このような期待と不安を抱えていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。

かつては、弁護士という資格そのものが大きな信頼となり、地域に事務所を構えるだけで自然と相談が舞い込む時代もありました。しかし、現代においてその常識は通用しなくなりつつあります。私たちサムライラボがこれまで多くの士業事務所様をご支援する中で見えてきたのは、成功している事務所には共通して「明確なマーケティング戦略」が存在するという事実です。

本記事では、これから事務所を大きく成長させていきたいと願う先生方のために、開業直後から実践できるマーケティングの戦略立案から具体的な集客方法、そしてぜひ知っておきたい広告・営業のルールまで、網羅的に解説していきます。

弁護士人口の増加と競争の激化

マーケティングの必要性が高まっている最大の理由は、弁護士を取り巻く環境の変化にあります。特に大きな要因が、弁護士人口の増加です。

2000年代の司法制度改革以降、弁護士の数は一貫して増加傾向にあります。日本弁護士連合会(日弁連)の統計によれば、日本の弁護士数は2000年代以降おおむね増加しており、日弁連の統計でも2024年時点で増加傾向が確認できます。これは、依頼者にとっては選択肢が増える一方で、弁護士にとっては顧客獲得競争が激化している傾向があると考えられます。

もはや、「待っている」だけでは依頼者の目に留まることすら難しくなってきているのです。数多くのライバルの中から自身の事務所を選んでもらうためには、自らの強みや専門性を積極的に伝え、届ける努力が不可欠となっています。

参考:基礎的な統計情報(2024年)

相談者の情報収集行動の変化

もう一つの大きな変化は、悩みを抱えた人々が専門家を探す方法が根本的に変わったことです。かつては知人からの紹介や地域の評判が主な情報源でしたが、今やほとんどの人がスマートフォンやパソコンを使い、インターネットで情報を検索します。

例えば、離婚問題で悩んでいる方は「離婚 弁護士 〇〇市」、相続で困っている方は「相続放棄 手続き 弁護士」といったキーワードで検索し、表示された複数の法律事務所のホームページを比較検討します。そして、弁護士の経歴や費用、解決事例などをじっくりと確認し、「この先生なら信頼できそうだ」と感じた事務所に初めて連絡を取るのです。

この変化は、裏を返せば、インターネット上に信頼できる情報発信の場(ホームページなど)を持っていない事務所は、そもそも比較検討の土俵にすら上がれないということを意味します。Webマーケティングへの理解と実践は、現代の弁護士にとって避けては通れない課題となっているのです。

開業直後に策定すべきマーケティング戦略の3ステップ

具体的な集客方法に飛びつく前に、まず行うべき最も重要なことがあります。それは、事務所の根幹となる「マーケティング戦略」を策定することです。戦略なき戦術は、闇雲に鉄砲を撃つようなもの。まずは、誰に、どのような価値を、どうやって届けるのかという設計図を描きましょう。

Step1:自事務所と市場環境を分析する(3C分析)

戦略立案の第一歩は、現状を正しく把握することです。そのために役立つのが「3C分析」というフレームワークです。

  • 顧客(Customer):あなたの事務所が助けたいと願う依頼者は、どのような悩みを抱え、何を基準に弁護士を選んでいるでしょうか? 年齢、性別、職業、そして何よりも「法律の専門家に何を求めているのか」を深く考えます。
  • 競合(Competitor):同じ地域や同じ分野で活動している他の法律事務所は、どのような強みを持ち、どのような料金体系で、どのように集客しているでしょうか? 競合のホームページをいくつか見てみるだけでも、多くのヒントが得られます。
  • 自事務所(Company):あなた自身の強みは何でしょうか? これまでのキャリアで培った専門分野、依頼者に寄り添う温かい人柄、迅速な対応力など、他の事務所にはない独自の価値を洗い出してみましょう。

これらの3つの視点から情報を整理することで、進むべき方向性が見えてきます。

Step2:戦う市場と顧客を定める(STP分析)

次に、3C分析で見えてきた市場の中から、どこで戦い、誰をターゲットにするのかを具体的に定めていきます。ここで用いるのが「STP分析」です。

  • セグメンテーション(Segmentation):法律相談という大きな市場を、特定のニーズや顧客層で細分化します。例えば、「離婚問題」という市場を、「男性側」「女性側」「財産分与に特化」「親権問題に特化」といったように切り分けます。
  • ターゲティング(Targeting):細分化した市場の中から、自事務所の強みが最も活かせる、勝算の高い市場を選び抜きます。例えば、「これまでの経験から、中小企業の経営者からの相談対応が得意だ」という強みがあるなら、「中小企業法務」をターゲットに据える、といった具合です。
  • ポジショニング(Positioning):ターゲットに定めた市場の中で、競合と差別化できる独自の立ち位置を明確にします。「地域で最も親身に話を聞いてくれる相続専門家」「IT分野に強い顧問弁護士」など、依頼者の心に残るキャッチフレーズを考えてみましょう。

「何でもやります」という姿勢は、結果的に誰の心にも響きません。勇気を持って専門分野を絞り、独自の立ち位置を明確にすることが、マーケティング成功の鍵となります。

Step3:具体的な施策に落とし込む(マーケティングミックス)

戦略の最終ステップとして、定めたターゲットとポジショニングに基づき、具体的なアクションプランを考えます。これを「マーケティングミックス(4P)」と呼びます。

  • Product(サービス):どのような法的サービスを提供するか。相談しやすいメニュー作りや、分かりやすい料金体系も含まれます。
  • Price(価格):相談料や着手金、報酬金をいくらに設定するか。初回相談無料などの戦略もここで検討します。
  • Place(提供場所・チャネル):どのように依頼者と接点を持つか。事務所での対面相談だけでなく、オンライン相談の導入や、ホームページ、ブログなども重要なチャネルです。
  • Promotion(販促活動):事務所の存在やサービスの魅力をどのように知ってもらうか。後述するSEO対策やリスティング広告、セミナー開催などがこれにあたります。

例えば、「IT企業の法務に強い(STP)」という戦略なら、「高品質な顧問契約(Product)を月額5万円から(Price)提供し、専門ブログ(Place)からの問い合わせをSEO対策(Promotion)で増やす」といったように、4つの要素に一貫性を持たせることが重要です。

【実践編】弁護士の新規集客を加速させる方法7選

戦略という羅針盤を手に入れたら、いよいよ具体的な集客活動という航海に出発です。ここでは、開業直後の弁護士の先生におすすめの集客方法を、オンラインとオフラインに分けてご紹介します。

弁護士のオンライン集客とオフライン集客の具体例をまとめた図解。

オンライン集客①:事務所の顔となるホームページ制作

現代において、ホームページは単なるオンライン上のパンフレットではありません。それは、先生の理念や人柄を24時間365日伝え続けてくれる「Web上のパートナー」であり、最も重要な集客の拠点です。

相談者は、先生の専門性や実績はもちろんのこと、「この先生は信頼できるか」「安心して悩みを打ち明けられるか」という点を厳しく見ています。そのため、弁護士のホームページには以下の要素が不可欠です。

  • 弁護士紹介:経歴だけでなく、理念や趣味など人柄が伝わるプロフィール
  • 取扱分野:何に強い事務所なのかが一目でわかる、専門分野の詳細な説明
  • 費用:相談者が最も不安に思う料金体系を、明確かつ分かりやすく提示
  • 解決事例:具体的な事例を通じて、相談後の未来をイメージさせる実績紹介
  • ブログ・コラム:専門知識を発信し、信頼性(Googleが重視するE-E-A-T)を高めるコンテンツ

私たち士業専門のWeb制作会社としては、見た目のデザインだけでなく、相談者が迷わず問い合わせまでたどり着ける「導線設計」こそが最も重要だと考えています。信頼感と集客力を両立したホームページは、事務所経営の強力な資産となります。

オンライン集客②:潜在顧客に届けるSEO・コンテンツマーケティング

素晴らしいホームページが完成しても、それだけでは見つけてもらえません。そこで重要になるのがSEO(検索エンジン最適化)です。

SEOとは、Googleなどの検索エンジンで、特定のキーワードが検索された際に自事務所のホームページを上位に表示させるための施策です。例えば、「名古屋 相続放棄 弁護士」と検索している人は、まさにその問題で専門家を探している可能性が非常に高い「潜在顧客」です。

このような方々に向けて、悩みを解決する専門的な記事(コンテンツ)をホームページ上で継続的に発信していくことが、SEOの基本であり王道です。良質なコンテンツは、検索順位を上げるだけでなく、先生の専門性や権威性を証明し、読者からの信頼獲得に直結します。多忙な先生方でも、例えば当社のAIライティングツール「OGAI」などを活用することで、効率的に質の高い記事を作成し、継続的な情報発信を行うことが可能です。(※当社サービスの紹介です)

オンライン集客③:即効性の高いリスティング広告

SEOは効果が出るまでに中長期的な時間が必要ですが、「開業直後で、すぐにでも問い合わせが欲しい」という場合に有効なのがリスティング広告(検索連動型広告)です。

リスティング広告は、検索結果の上部にある広告枠にお金を払ってホームページを表示させる仕組みです。すぐにでも依頼したいと考えている「今すぐ客」に直接アプローチできるため、即効性が非常に高いのが最大のメリットです。

一方で、継続的に広告費がかかることや、費用対効果を最大化するためには専門的な知識が必要になるという側面もあります。やみくもに出稿すると費用だけがかさんでしまうため、キーワードの選定や広告文の作成は慎重に行う必要があります。より詳しいポイントについては、「士業HPを適正な予算でリスティング広告を出すたった4個のポイント」の記事も参考にしてみてください。

弁護士がクライアントと信頼関係を築いている様子。紹介や口コミの重要性を示唆している。

オフライン集客①:最も確実な紹介・口コミ

Webマーケティングが主流となった現代でも、弁護士の集客において最も重要で質の高いルートは、やはり「紹介」です。知人や友人、そして何より一度依頼を受け、満足していただいたクライアントからの口コミは、絶大な信頼性を伴います。

また、弁護士の業務は他士業と密接に関連することが多いため、税理士、司法書士、社会保険労務士といった先生方との連携も非常に重要です。日頃から交流会などに顔を出し、信頼関係を築いておくことで、「うちのお客さんで困っている人がいるので、先生を紹介してもいいですか?」といった形で、自然と紹介が生まれるようになります。

一つ一つの案件に真摯に向き合い、期待を超える成果を出すことが、最高の紹介を生むための最も確実な方法と言えるでしょう。

オフライン集客②:専門性をアピールするセミナー・講演会

自身の専門性を多くの人に直接アピールできる有効な手段が、セミナーや講演会の開催です。

例えば、相続を専門に扱っているのであれば、地域の高齢者向け施設や金融機関と連携して「よくわかる遺言・相続セミナー」を開催する。企業法務が専門なら、商工会議所などで「中小企業のための契約書トラブル防止セミナー」を企画する、といった形です。

セミナーの参加者は、その分野に関心や悩みを抱えている可能性が高い潜在顧客です。大勢の前で専門家として堂々と話す姿は、参加者に大きな信頼感と安心感を与えます。セミナー終了後に個別相談会などを設けることで、スムーズに受任へと繋げることが可能です。

【注意】弁護士の営業・広告で禁止されていること

マーケティング活動を積極的に行う上で、絶対に忘れてはならないのが、弁護士法や弁護士職務基本規程などで定められた広告・営業に関するルールです。知らずに規程違反を犯してしまうと、懲戒処分など重大な結果を招きかねません。特に注意すべき点を解説します。

弁護士が営業規制に関する書類を確認している。非弁提携などの禁止事項の重要性を示している。

非弁提携とは?定義と禁止される理由

弁護士の営業活動で最も注意すべきものが「非弁提携」です。これは、一般に非弁提携とは弁護士法第72条に抵触するおそれのある、非弁行為に関与する行為を指しますが、具体的に該当するかは契約の内容や実態次第です。詳細は弁護士法第72条の条文および法務省・最高裁等の公的見解を参照してください。

具体的には、弁護士でない者(個人・法人を問わず)が、利益を得る目的で法律事件に関して依頼者を紹介・周旋することに関与し、その者から事件の紹介を受けたり、報酬を分け合ったりする行為が典型です。これが禁止される理由は、国民が質の低い法的サービスによって不利益を被ることを防ぎ、弁護士の独立性と品位を守るという公益的な目的があるからです。

依頼者の紹介を受けること自体が禁止されているわけではありませんが、その紹介に「対価性」や「事業性」が伴う場合に、非弁提携と判断されるリスクが高まります。

参考:隣接士業・非弁活動・非弁提携対策(業際 …

知らないうちに陥る非弁提携の具体例

開業弁護士が意図せず非弁提携に陥ってしまうケースには、注意が必要です。以下に典型的な例を挙げます。

  • Web集客業者への成果報酬型の支払い:「問い合わせ1件につき〇円」「受任額の〇%」といった成果報酬型の支払いは、非弁行為と判断されるリスクが高いため注意が必要です。具体的な契約形態については所属弁護士会や法務省の見解を確認し、必要に応じて事前に相談してください。Web関連の費用は、制作費や広告運用費といった固定費で支払うのが原則です。
  • 不動産業者やコンサルタントからの紹介料:事件を紹介してくれた不動産業者などに対して、紹介料やキックバックを支払うことは明確に禁止されています。感謝の気持ちを示す場合でも、金銭の授受は絶対に避けなければなりません。
  • 事務職員へのインセンティブ(歩合給):事務職員が獲得した事件数に応じて給与にインセンティブを上乗せする制度も、非弁行為を助長するものとして非弁提携とみなされる恐れがあります。

これらの行為は、弁護士の独立性を害し、依頼者の利益よりも紹介者の利益が優先されかねないため、厳しく禁じられています。

虚偽・誇大な広告の禁止(広告規程)

ホームページやパンフレットなどで広告を行う際には、「弁護士等の業務広告に関する規程」を遵守する必要があります。特に禁止されているのは、虚偽または誤導を招くような誇大な表現です。

【禁止される表現の例】

  • 「必ず勝てます」といった、結果を保証する表現
  • 客観的な根拠なく「日本一」「業界No.1」といった最上級の表現を用いること
  • 「〇〇分野の権威」など、誤解を招くような肩書きの使用
  • 弁護士の品位を損なうような過度に扇情的な表現

広告は、依頼者が適切な弁護士を選ぶための重要な情報源です。常に誠実で、誤解を招かない正確な情報発信を心がける必要があります。

参考:弁 護 士 等 の 業 務 広 告 に 関 す る 規 程

まとめ|戦略的なマーケティングで事務所を成長させよう

この記事では、開業弁護士の先生方が直面する集客の課題について、戦略の立て方から具体的な手法、そして遵守すべきルールまでを解説してきました。

競争が激化し、相談者の行動が変化した現代において、事務所を安定的に成長させていくためには、以下の3つの柱が不可欠です。

  1. 正しいマーケティング戦略の立案:誰に、何を、どう届けるかという設計図を描く。
  2. 地道な集客活動の実践:オンラインとオフラインの両輪で、事務所の価値を伝え続ける。
  3. 法律・規程の遵守:弁護士としての品位を保ち、ルールに則った健全な活動を行う。

マーケティングは、一朝一夕で成果が出るものではありません。しかし、正しい戦略のもとで粘り強く実践を続ければ、道が拓ける可能性は高まります。この記事が、第一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。

もし、「自事務所に合った戦略がわからない」「何から手をつければいいか具体的に相談したい」とお考えでしたら、ぜひ一度、私たち士業専門のマーケティングチームにご相談ください。先生の事務所の未来を、共に描くお手伝いができれば嬉しく思います。

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