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弁護士や法律事務所のホームページ制作において、先生方から最も多くいただくデザインのご要望があります。 それは、「重厚感のある、かっこいいサイトにしたい」というものです。
確かに、黒や濃紺を基調としたデザインは、弁護士としての「威厳」や「強さ」を表現できます。しかし、集客(お問い合わせ獲得)という観点で見ると、その「重厚感」が逆にユーザーを遠ざける原因になってしまうことがあるのです。
今回は、実際にあった「刑事事件」を扱う弁護士サイトの改善事例をもとに、ホームページにおける「色」と「ユーザー心理」の重要な関係についてお話しします。
このページの目次
事例:順位は上がったのに、電話が鳴らない?
ある刑事弁護を専門とする先生のホームページでの出来事です。
先生からの強いご要望で、「刑事事件=戦う」というイメージから、黒とダークグレーを基調とした、非常に重厚で厳格な雰囲気のデザインで制作しました。先生には「イメージ通りだ」と大変喜んでいただきました。
公開後、SEO対策の効果もあり、検索順位は順調に上昇。「刑事事件 弁護士」などの主要キーワードで上位表示され、アクセス数も増えていきました。
ところが、です。 アクセス数はあるのに、お問い合わせフォームからの送信が全くなく、電話も想定より少なかったのです。
データが示した原因は「直帰率」の高さ
「なぜ、人は来ているのに相談につながらないのか?」 私たちはすぐにアクセス解析を行いました。すると、異常な数値が出ている項目がありました。
それは「直帰率(ちょっきりつ)」です。 直帰率とは、サイトに来たユーザーが、最初の1ページだけを見て「戻る」ボタンを押し、帰ってしまった割合のことです。
この数値が極端に高かったのです。つまり、ユーザーは検索してサイトに入ってきた瞬間、「うわっ」と思ってすぐにページを閉じていたということです。
「怖い」と思っている人に「怖い」デザインを見せてはいけない
原因は明らかでした。デザインの「圧(プレッシャー)」です。
刑事事件で弁護士を探しているユーザー(またはその家族)は、逮捕や警察沙汰でパニックになり、極度の不安と恐怖の中にいます。 そんな心理状態の時に、黒々とした威圧感のあるホームページが表示されたらどう感じるでしょうか?
「頼りになりそう」と思うよりも先に、「怖そう」「怒られそう」「敷居が高すぎて相談できない」と無意識に萎縮してしまったのです。
改善策:「重厚感」を捨て、「安心感」へ
私たちは先生にこの仮説とデータを説明し、「ご希望のデザインとは異なるかもしれませんが、集客のために変えさせてください」と提案しました。
そして、思い切ったリニューアルを行いました。
配色: 「黒・グレー」 → 「白・淡い青・ベージュ」へ変更
写真: 「腕組みをした厳しい表情」 → 「相談者に寄り添う柔らかな表情」へ変更
つまり、「強さ」よりも「安心感(救い)」を感じさせるデザインへと180度転換したのです。
結果:問い合わせ数は劇的に改善
変更から1ヶ月後、結果は数字に現れました。 直帰率が大幅に下がり、それに比例するように、お問い合わせフォームからの相談や電話の件数が急増したのです。
この事例から分かることは、「ホームページのデザインは、先生の好みではなく、ターゲットとなるユーザーの心理に合わせて決めなければならない」という鉄則です。
企業法務 → 重厚感や信頼感(黒、紺、金など)が有効
離婚・借金・刑事 → 安心感や親しみやすさ(白、緑、オレンジ、水色など)が有効
扱う分野によって、正解となる色はまったく異なります。
まとめ:私たちは「イエスマン」ではありません
Web制作会社として、お客様のご要望通りに作ることは簡単です。しかし、それでは結果が出ないことを私たちは知っています。
もし、先生のご要望が、ユーザー心理やマーケティングの視点から見てマイナスになると判断した場合は、正直に「それはおすすめできません」とお伝えし、代替案をご提示させていただきます。
「せっかく作ったのに反響がない」という失敗を防ぐためにも、デザインや配色はプロの知見にお任せください。 「今のサイトの色味は合っているだろうか?」と気になった方は、ぜひ一度ご相談ください。ターゲットに最適な「売れるデザイン」をご提案します。

