弁護士や司法書士の先生方がホームページを制作する際、必ず決めなければならないのが「事務所名」または「サイト名」です。これは、ホームページを訪れた相談者候補が事務所を識別するためだけでなく、Googleなどの検索エンジンに正しく認識され、評価されるためにも極めて重要な要素となります。
例えば、既存のクライアントから紹介を受ける際、「〇〇法律事務所で検索してみて」と言われても、その名称が一般的すぎると、検索結果に埋もれてしまい、せっかくの紹介が無駄になりかねません。
ユーザー(相談者)と検索エンジンの双方に「見つけてもらいやすい」名称にすること。これが、ウェブ集客の成功に向けた第一歩となるのです。
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なぜ、ありふれた事務所名は不利なのか?
例えば、日本で非常に多い名字である「佐藤」を事務所名に冠したとしましょう。
試しに、本日(2025年10月20日)現在、日弁連の弁護士検索で「佐藤」と検索すると、実に600名以上の弁護士が登録されています。(2016年時点では約430名でしたので、この9年間で大幅に増加しています。)
もし、この先生方の多くが「佐藤法律事務所」という名称でホームページを公開したら、相談者が目的の事務所を見つけ出すのは非常に困難です。これは極端な例ですが、実際に似たような現象は多くの事務所名で起きています。
情報が爆発的に増え続ける現代において、いかにして他との違いを明確にし、覚えてもらうかが、これまで以上に重要になっているのです。
Web集客を成功に導く事務所名の3つの黄金律
では、どのような名称がウェブ集客において有利に働くのでしょうか。マーケティングの観点から考えると、好ましい事務所名・サイト名には、以下の3つの要素が含まれています。
1. 「地名」を入れて、地域での信頼性を高める
地域に根差して活動する場合、「新宿」「横浜」「名古屋駅前」といった地名を入れることは非常に有効です。
- ユーザーへのメリット: 「〇〇市で相続に強い弁護士を探したい」と考えるユーザーにとって、事務所名に地名が入っていると、自分の地域の専門家であると一目で認識でき、安心感につながります。
- 検索エンジンへのメリット: Googleは「地域性(ローカル)」を重視します。「新宿 相続 弁護士」といった「地名+業務内容」での検索(ローカルSEO)において、事務所名やサイト名に地名が含まれていると、関連性が高いと判断され、検索結果で上位に表示されやすくなります。
2. 「業務名」を入れて、専門性を一目で伝える
「相続」「離婚」「交通事故」「債務整理」など、特に力を入れている分野の業務名を名称に含めることも、極めて効果的な戦略です。
- ユーザーへのメリット: 悩みを抱えた相談者は、自分の問題の専門家を探しています。事務所名に「相続相談室」や「離婚問題専門」といった言葉が入っていると、「ここなら自分の悩みを分かってくれそうだ」と直感的に理解し、クリックしやすくなります。
- 検索エンジンへのメリット: サイトのテーマが明確になり、特定の分野における専門性や権威性(E-E-A-T※)を検索エンジンに伝えやすくなります。結果として、その分野に関するキーワードで検索された際に、上位表示される可能性が高まります。
※E-E-A-T: Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の頭文字。Googleがサイトの品質を評価するための重要な指標。
3. 「独自性」を持たせ、記憶に残りやすくする
他の事務所と明確に区別でき、一度聞いたら忘れにくい独自性のある名称は、強力なブランドとなります。
- 指名検索を増やす: ユニークな名称は記憶に残りやすく、後日「指名検索(事務所名で直接検索してもらうこと)」につながります。指名検索は、購買意欲が非常に高いユーザーからのアクセスであるため、受任につながる確率も高まります。
- ドメイン取得の容易さ: ありふれた名称は、希望するドメイン(〇〇.comなど)が既に使われていることが多いですが、独自性のある名称なら取得しやすいというメリットもあります。
- 理念や想いを込める: 事務所の理念や、相談者に伝えたい想いを込めた名称(例:「弁護士法人〇〇リーガルパートナーズ」「司法書士法人〇〇テラス」など)は、ブランディングに繋がり、共感を呼ぶきっかけにもなります。
【応用編】すでに事務所名が決まっている場合の戦略
「もう事務所名は決まっていて変えられない」という先生も多いでしょう。その場合でも、諦める必要はありません。ウェブ集客を有利に進めるための方法はあります。
それは、特定の業務に特化した専門サイト(特化サイト)を立ち上げ、その「サイト名」を工夫するという戦略です。
例えば、「〇〇法律事務所」という名称はそのままに、相続問題に特化したサイトを新たに制作し、サイト名を「名古屋 相続遺言相談室」や「〇〇法律事務所運営・相続手続サポート」のようにするのです。
これにより、事務所本体の名称を変えることなく、特定の分野で集中的に集客を行うことが可能になります。
まとめ:事務所名・サイト名は、未来の依頼者への最初のメッセージ
2025年現在、ホームページは単なる「インターネット上の看板」ではありません。事務所の専門性や理念を伝え、未来の依頼者との最初の接点となる、最も重要なマーケティングツールです。
これから独立開業される先生方、法人化を機に名称変更を検討されている先生方は、ぜひ今回ご紹介した「地名」「業務名」「独自性」の3つの視点から、事務所名を戦略的に考えてみてください。
また、すでに事務所をお持ちの先生方も、特化サイトの活用によってウェブ集客を大きく改善できる可能性があります。
事務所名やサイト名を慎重に選ぶこと。それは、未来の依頼者に見つけてもらい、選んでもらうための、最も効果的な投資の一つと言えるでしょう。

